【東京 8月19日】
本日、日本の映画会社大手5社が連名で声明を発表し、これまで続けてきた映画のテレビ放映制限を全面的に撤廃する方針を明らかにした。映画各社は長らく、劇場収入の減少を懸念してテレビ放送を制限してきたが、テレビの普及に伴い宣伝効果や新たな収益源としての可能性を重視し、政策転換に踏み切ったものである。
声明では「映像文化の発展のため、映画をテレビを通じて広く国民に提供することが必要」と強調。今後は公開から一定期間を経た作品を順次テレビに提供し、劇場と放送の双方で映画を楽しめる環境を整えるとしている。これにより、家庭でも名作映画が視聴可能となり、娯楽の幅が大きく広がることになる。
背景には、テレビの急速な普及がある。全国の家庭に受像機が行き渡り、視聴者の娯楽の中心がテレビへと移る中、映画各社は観客動員の減少に直面していた。今回の制限撤廃は、テレビを競合ではなく協力の相手と位置づけ、映画文化の再活性化を目指す戦略といえる。
業界内では歓迎の声と同時に、慎重な見方もある。ある映画館主は「家庭で簡単に映画が見られるようになれば、客足がさらに遠のくのでは」と不安を漏らした。一方、テレビ局関係者は「放送作品の質が高まる。視聴者にとっても朗報だ」と期待を寄せている。
観客の中には「劇場の大スクリーンで見る迫力と、家庭で気軽に楽しむ便利さは別物。両方あってよい」との声も聞かれ、今後は映画とテレビが相互に補完し合う新しい関係を築けるかが注目される。
日本映画界が大きな転換点を迎えた今日、スクリーンと電波を結ぶ新たな時代の幕が上がった。
— RekisyNews 文化・娯楽面 【1963年】