【カザフ草原の発射基地 8月19日】
本日、ソ連は動植物を多数収容した有人宇宙船試験機「スプートニク5号」を打ち上げ、地球周回軌道への投入に成功した。搭載されたのは2匹の犬「ベルカ」「ストレルカ」をはじめ、マウスや昆虫、植物などで、飛行中の生体反応と帰還時の安全性を同時に検証する狙いだ。地上局は心拍や呼吸などの生体データ、機内カメラの映像を受信しているという。
ロケットは多段式で、最終段の燃焼終了後に衛星を分離。軌道要素は良好とされ、飛行は計画通り進行中だ。機体には温度管理や与圧、姿勢制御など将来の有人飛行に直結する装置が組み込まれており、各系統の長時間運用データが収集される。
任務計画では、およそ一日の周回飛行を行ったのち減速噴射を実施し、再突入カプセルを分離。パラシュートで地上に着地させ、回収班がただちに救出する段取りとなっている。成功すれば、軌道飛行からの生体回収として画期的成果となる見込みだ。
ソ連科学アカデミー関係者は「宇宙空間での生理反応と帰還時の負荷を実証する重要な一歩」と強調。国外の観測筋は「高温にさらされる再突入、着地時の減速・衝撃吸収などが最大の難所」と指摘しつつ、技術水準の高さに注目している。
先行の動物搭載実験では帰還を果たせなかった例もあるだけに、今回の回収成否は今後の有人飛行計画を左右する。宇宙を目指す競い合いが激しさを増す中、スプートニク5号の行方に世界の目が注がれている。
— RekisyNews 科学・宇宙面 【1960年】