【ロンドン=ニューヨーク 8月16日】
本日、英国と米国を結ぶ大西洋横断電信ケーブルが開通し、ヴィクトリア女王とジェームズ・ブキャナン大統領が祝賀の電報を交換した。大西洋を隔てた両国首脳による直接の通信は史上初であり、海底電信の時代が幕を開けた。
このケーブルはアイルランド南西端バレンシア島とニューファンドランド島を結び、全長は約2500マイルに及ぶ。敷設には英国艦アガメムノン号と米国艦ニアガラ号が合同であたり、数週間の困難な作業を経て完成にこぎ着けた。深海の荒天や機材故障にたびたび見舞われたが、関係者の粘り強い努力が実を結んだ。
ヴィクトリア女王からの祝電は、「両国の友好と世界平和を願う」との言葉で始まり、米国との結びつきの強化に期待を示した。ブキャナン大統領は返信で「この事業は人類の知恵と勇気の証であり、両国民の結束を深める」と応じた。
ロンドン市内では開通を祝う礼拝や市民集会が行われ、ニューヨークでも港湾や公共施設に旗が掲げられた。市民の一人は「数日かかっていた通信が、数分で届く時代になるとは」と驚きを隠さなかった。
技術者らは、今回の成功が国際通信の発展を加速させ、外交・商業・報道のあらゆる分野で新たな可能性を開くと見込んでいる。海底ケーブルが大西洋を越えた今日、世界はこれまでになく近く感じられる。
— RekisyNews 国際・科学面 【1858年】