【甲子園 8月16日】
第74回全国高等学校野球選手権大会第9日、第2試合で、星稜(石川)の主砲・松井秀喜選手が明徳義塾(高知)との3回戦で全5打席連続敬遠されるという異例の試合展開となった。試合は明徳義塾が3対2で勝利し、星稜はベスト16で姿を消した。
松井選手は大会屈指の長打力を誇り、前試合までに本塁打3本、打率6割超を記録。明徳義塾の馬淵史郎監督は試合前から「松井には絶対に打たせない」と徹底マークを指示していた。初回、無死一塁での第1打席から申告敬遠。以降も走者や状況にかかわらずすべての打席で四球が選択された。
これにより、松井選手は一度もバットを振ることなく試合を終えた。観客席からはブーイングとため息が交錯しつつも、「勝つための戦術」と理解を示す声もあった。星稜の山下智茂監督は「勝負してほしかったが、相手の作戦も野球」と淡々とコメント。松井選手自身も「悔しいがチームが勝てなかったことが一番残念」と語った。
一方の明徳義塾は、松井選手の出塁を許す代わりに後続打者を抑え、守備で得点を最小限にとどめる堅実な試合運びを見せた。3回に奪った先制点と6回の追加点が決勝点となり、終盤の星稜の追い上げを振り切った。
この試合は、甲子園史上まれに見る「打たせない戦術」の象徴として、観衆の記憶に長く刻まれることになりそうだ。
— RekisyNews スポーツ面 【1992年】