シューベルト『未完成』、ウィーンで死後初演──交響曲ロ短調が聴衆を沈黙させる

【ウィーン 12月17日】

本日、作曲家フランツ・シューベルトが遺した交響曲第8番(ロ短調)D.759「未完成」が、ウィーンの楽友協会の演奏会で初めて公の場にかけられた。作曲者の死後、長く埋もれていた作品がようやく日の目を見た形で、会場には開演前から異様な緊張が漂った。

指揮を執ったヨハン・フォン・ヘルベックは、二つの楽章のみで途切れる特異な交響曲を、あえて“未完”のまま提示した。第1楽章の暗い導入が鳴った瞬間、客席は息を呑み、続く第2楽章では深い哀愁と静かな慰めが交錯する旋律が広がった。終楽章を欠くにもかかわらず、音楽の輪郭は崩れず、むしろ断片であることが強い印象を残した。

関係者によれば、作品は長らく知人のもとに保管されていたが、近年になって演奏の機会が整い、今夜ついに披露に至ったという。聴衆からは割れんばかりの拍手が起こり、評論家の間では「未完成であるがゆえに、聴く者の想像をかき立てる」との声も出ている。シューベルトの交響的才能を改めて世に示す一夜となった。

— RekisyNews 文化面 【1865年】

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