松下電器産業、株式会社として新発足──飛躍期迎える国産電機メーカー

【大阪 12月15日】

本日、松下幸之助氏が率いる松下電器産業が株式会社として正式に発足した。創業以来、電球ソケットやランプ、電気器具を独自開発してきた同社は、これまでの個人経営体制から企業組織としての枠組みを整え、本格的な量産体制と事業拡大へ向けた新段階に踏み出した。

設立登記が完了した本社では朝から社員が集まり、祝賀の雰囲気の中で新会社の方針が発表された。松下社長は式辞で「世間の要望に応える良品を広く届け、社会の繁栄に寄与する企業でありたい」と述べ、品質第一主義を今後も揺るがぬ信条として掲げた。また、家庭電化の進展を見据え、新たな生活家電の開発にも意欲を示した。

同社はすでに大阪を中心に販売網を広げており、国産電機メーカーとして台頭しつつある。世界恐慌後の不況を乗り越えた堅実な成長は業界内でも注目され、今回の株式会社化により資金調達の容易化や事業基盤の強化が期待される。社員の一人は「これまで以上に責任が増すが、同時に未来が開けた気がする」と語った。

国内では電化需要が拡大を続け、家庭向けの電気器具は今後さらに普及が進むとみられる。松下電器産業の新体制発足は、国産電機産業の競争が激化する中で、大きな節目となる出来事といえそうだ。

— RekisyNews 経済面 【1935年】

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