【東京・代々木練兵場 12月14日】
本日午前、陸軍の徳川好敏大尉がフランス製複葉機を操縦し、日本で初めての動力飛行実験に成功した。澄んだ冬空の下、白い機体が地面を滑り、やがてふわりと浮き上がった瞬間、見守る関係者からどよめきが起こった。徳川大尉の飛行距離はおよそ百メートルに達したとされ、わが国の航空史に新たな頁が刻まれた。
試験場となった代々木練兵場には、陸軍技術者や新聞記者らが集まり、緊張した空気が漂っていた。大尉は慎重にエンジンの調整を行ったのち、ゆっくりと滑走を開始。機体が徐々に速度を増すと、重力から解き放たれたように上昇し、数秒間にわたって安定した飛行を見せた。着陸も滑らかに成功し、陸軍首脳部からは早くも航空部隊の将来を見据える声が上がっている。
この成功により、わが国の飛行機研究は欧米列強に対して一歩前進したといえる。大尉は帰還後、「空を征することは、国防の大計に資する」と静かに語った。今後は機体改良と飛行技術のさらなる習熟が急務となるが、本日の成果は日本が新しい時代へ踏み出した確かな証しである。
— RekisyNews 科学面 【1910年】
