【東京 8月15日】
若手歌人・与謝野晶子氏(本名鳳志やう=堺出身)の第一歌集『みだれ髪』が本日、東京・新詩社から刊行された。350首余を収め、恋と情熱、女性の自我を鮮烈にうたった作風が話題を呼んでいる。
『みだれ髪』は、平仮名主体のやわらかな表記と大胆な心情吐露が特徴。冒頭から恋愛を主題とし、従来の和歌の形式美を保ちながらも、女性自身の欲求や感情を率直に表現している点が新しい。中には「恋する命のほしければすべてを捨てよ」といった挑発的な趣の作もあり、既成の道徳観に揺さぶりをかける内容となっている。
晶子氏は堺の商家に生まれ、十代より短歌を作り始めた。与謝野鉄幹氏が主宰する雑誌『明星』で頭角を現し、今回の歌集刊行に至った。鉄幹氏は序文で「彼女の歌は烈火のごとく燃え、氷をも溶かす」と評し、異彩を放つ才能を高く評価している。
東京市内の書店では発売初日から注目を集め、若い女性読者が手に取る姿も見られた。一方で、過激な恋愛観や女性の主体性を強調する内容に対し、保守的な批評家からは「行き過ぎた情熱」との声も上がっている。
晶子氏は刊行にあたり「女も人として自由に恋し、歌う権利がある」と語った。『みだれ髪』は明治の文学界に新風を吹き込み、女性歌人の地位を押し上げる契機となりそうだ。
— RekisyNews 文化部 【1901年】