【東京 12月4日】
本日、東京株式取引所において株価が急騰し、記録的な活況を呈した。欧州で続く大規模な戦争による特需の波が日本経済にも本格的に及び始め、“戦時景気”の幕開けを象徴する一日となった。
午前の寄り付きから、繊維、海運、鉄鋼、化学といった輸出関連株に買い注文が殺到。株価表示板には次々と“ストップ高”の札が掲げられ、売買立会場は怒号と興奮に包まれた。証券会社の一角では、電話線が鳴り止まず、株券を抱えた客が列を作るほどであった。
欧州の戦況が長期化する中、日本には軍需品や生活物資の注文が集中しており、企業の業績は急速に改善しつつある。横浜港では輸出貨物の船積みが増え、倉庫業者は「荷受けが追いつかない」と悲鳴を上げるほどだ。海運会社の営業担当者は「欧州向けだけでなくアジア各地からの依頼も増えている。運賃も上昇が続く」と語った。
今日の株価上昇をけん引したのは、特に紡績・海運・造船の三分野である。大阪や名古屋の紡績企業は欧州製品が途絶えたことで受注が急増し、化学工業も染料や薬品の代替生産で拡大が続いている。市場関係者は「欧州大戦の需要が日本企業に追い風をもたらし、来年以降も好況が続く可能性が高い」と予測する。
一方で、急速な株高に対し、一部では過熱感を懸念する声も上がっている。ある銀行関係者は「実体を伴わない投機が増えると反動も大きい。市場の熱気を冷静に見守る必要がある」と警鐘を鳴らした。
それでも、市場の熱気は衰える気配を見せていない。夕方には商人たちが取引所前で今日の値動きを語り合い、若い投資家が「この景気は続く」と自信を見せる姿も見られた。
本日の暴騰は、日本が世界経済の中で新たな役割を担い始めたことを示す象徴的瞬間である。 欧州大戦の影響が長引く中、東京市場は今後も激しい動きを見せることになりそうだ。
— RekisyNews 経済面 【1915年】
