薬師寺保栄、激闘の末に統一王者へ──日本人同士初の世界バンタム級統一戦、頂点を決める

【名古屋 12月4日】

本日、名古屋レインボーホールで行われた WBC世界バンタム級統一王座決定戦 において、正規王者 薬師寺保栄 と暫定王者 辰吉丈一郎 が拳を交え、日本ボクシング史上初となる世界同級王座統一戦が大観衆の中で実現した。注目の一戦は、12回の激闘を経て 2-0の判定で薬師寺が勝利し、WBC世界バンタム級の完全統一王者となった。

会場には全国から詰めかけた1万人規模の観衆が集まり、開始前から異様な熱気に包まれた。ベルが鳴ると同時に、辰吉は鋭いジャブと踏み込みで主導権を取りにいく構えを見せ、一方の薬師寺は距離を取りつつ冷静にカウンターの機会を伺った。序盤は辰吉の攻勢が目立ったが、中盤以降は薬師寺のフットワークと的確な左が機能し、流れが徐々に傾いていった。

試合の転機は8回、薬師寺の鋭い右が辰吉の顔面をとらえ、会場からどよめきが起きた。辰吉も負けじと前へ出たが、薬師寺は軽快な動きでかわし続け、終盤にはペースの主導権を完全に握った。最終ラウンドでは両者とも疲労が色濃く見える中、意地と意地がぶつかる真っ向勝負となり、観客は総立ちで声援を送った。

判定は2-0(1者は引き分け)の決着。勝利を告げられた瞬間、薬師寺は両手を突き上げ、コーナーに駆け寄って歓喜を爆発させた。リング上で薬師寺は「応援してくれたみんなのおかげ。辰吉選手は強かった」と涙ながらに語り、一方の辰吉は悔しさをにじませつつも「これが世界の勝負。必ず戻ってくる」と決意を見せた。

今回の統一戦は試合前から大きな注目を集め、テレビ中継も高視聴率を記録した。専門家は「日本ボクシング史に残る名勝負」「技術と気迫がぶつかり合った稀有な戦い」と高く評価している。また、両者の人気や背景も相まって、平成ボクシング界最大級のイベントとして長く語り継がれることは間違いない。

日本人同士で世界王座の頂点を争う前例のない舞台は、その熱量とともに観る者の心に深く刻まれた。薬師寺保栄が手にした統一王座は、今日の激闘が生んだ歴史的勲章と言えるだろう。

— RekisyNews スポーツ面 【1994年】

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次