沢村栄治元投手、乗船の輸送船が撃沈──屋久島沖で消息絶つ、日本球界に深い衝撃

【鹿児島・屋久島沖 12月2日】

本日未明、屋久島の西方・東シナ海上を航行していた日本陸軍の輸送船が、米潜水艦による襲撃を受け沈没した。乗船していた兵員の多くが行方不明となっており、その中には元巨人軍投手として知られた沢村栄治氏(27)が含まれていることが関係者への取材で明らかになった。日本球界に名を刻んだ名投手の消息不明は、戦時下の国民に大きな動揺をもたらしている。

輸送船は早朝、屋久島沖を北上中に米潜水艦シーデビル(USS Sea Devil)の魚雷攻撃を受け、複数の命中後、短時間で沈没したとみられる。現場付近では海軍の捜索が続けられているが、強風と高い波により救助作業は難航している。生存者はわずかと見られ、乗員・兵員の多くが海に投げ出されたまま消息を絶った。

沢村氏は戦前、読売巨人軍のエースとして活躍し、剛速球を武器に日本初のノーヒットノーランを達成した投手として知られる。召集により一度は球界を離れ、その後復帰するも再び応召。今回の輸送船には南方派遣部隊の一員として乗船していた。巨人軍関係者は「戦地から無事戻る日を待っていたのに…言葉がない」と沈痛な表情を見せた。

鹿児島県内の村落では、曳航される軍船の姿を遠くに見た住民が「海の向こうが赤く光った」と証言しており、襲撃の激しさを物語っている。沿岸には漂流物が流れ着き、軍の要員が回収作業にあたっている。

一方、野球を知る国民の間では、沢村氏の消息に関心が集中している。東京の避難所で暮らす少年は「戻ってきたらもう一度投げてほしかった」と涙ながらに話し、別の男性は「戦争がいかに多くの才能を奪っていくか痛感する」と肩を落とした。

捜索は今も続けられているものの、現場海域の状況から、生存はきわめて厳しいとの見方が強い。日本の野球史を築いた若き名投手の行方は依然不明であり、国民に深い悲しみと戦争の現実を突きつけている。

— RekisyNews 社会面 【1944年】

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