【パリ 12月2日】
本日、パリ中心部のノートルダム大聖堂において、第一統領ナポレオン・ボナパルトが盛大な戴冠式を挙行し、ついにフランス皇帝として即位した。革命後の混乱から立ち直りつつあるフランスにとって、国家の新たな体制が示される歴史的な一日となった。
式典は早朝から市内に鳴り響いた鐘の音とともに始まり、沿道には皇帝を一目見ようと市民が大勢詰めかけた。大聖堂内部は赤と黄金を基調とする豪華な装飾で埋め尽くされ、教皇ピウス七世もローマから臨席するなど、かつてない規模の厳粛な儀式が整えられた。
注目を集めたのは、戴冠の瞬間である。本来であれば教皇が冠を授けるのが慣例だが、ナポレオンは玉座の前に進むと自ら冠を手に取り、そのまま自分の頭上へと掲げて戴冠した。この行為は、革命後の新しいフランスが“教会や旧王家の権威ではなく、国家の意思に基づく統治”へと歩む象徴と捉えられている。
続いて皇后ジョゼフィーヌへの戴冠も行われ、場内には荘厳な楽曲が響いた。参列した政府高官や軍人たちは次々に忠誠を誓い、市民代表も祝辞を述べた。外では祝砲が上がり、凱旋門付近では兵士が行進を行って祝意を示した。
式典に参加した商人の男性は「戦乱の続く時代だが、今日のパリには久しぶりに秩序と希望を感じた」と語り、別の市民は「皇帝の時代が始まる」と興奮を隠さなかった。一方で、一部には「新たな権力集中を懸念する声」も上がっており、革命精神を重んじる市民との間に微妙な緊張も見られる。
とはいえ、ナポレオンの軍事的成功と行政改革は国内外に強い影響力を持ち、今回の戴冠はその地位を決定的なものにした。ヨーロッパ各国では、彼の即位が国際情勢を大きく揺さぶるとの見方もあり、ウィーンやロンドンでは早くも対応協議が始まる気配がある。
大聖堂の外では夜遅くまで祝いの歌声が続き、パリの街は新たな皇帝誕生の熱気に包まれている。
— RekisyNews 国際面 【1804年】
