ロンドン名物「水晶宮」、深夜の火災で全焼──鉄骨とガラスの巨殿が炎に沈む

水晶宮

【ロンドン 11月30日】

本日未明、英国ロンドン南部シドナムにそびえる名建築「水晶宮(クリスタル・パレス)」が大規模な火災に見舞われ、夜明け前までにほぼ全焼した。鉄とガラスで構成された巨大建造物は明るい炎に包まれ、遠くテムズ川沿いからも炎柱が確認されるほどで、市民からは衝撃と悲嘆の声が相次いでいる。

火災が発生したのは午後7時過ぎとみられ、最初に展示ホール付近から炎が上がった。現場の監視員によれば、「建物内部で何かが破裂するような音がし、その直後に火の手が上がった」という。ガラスを多用した構造のため、炎は瞬く間に天井部全体へ広がり、鉄骨が赤く染まるほどの高温となった。

消防隊は多数出動したが、広大な建物と内部の複雑な構造が消火活動を難航させた。夜が深まるにつれて屋根のガラス板が崩れ落ち、内部の展示物や機械装置は次々に焼失。周囲には割れたガラスが雨のように降り注ぎ、近隣住民は安全確保のため家屋から避難する事態となった。

水晶宮は1851年のロンドン万国博覧会のために建設されたもので、その革新的なガラス建築は英国の産業力と近代の象徴とされてきた。博覧会後はシドナムに移築され、音楽会や科学展、博覧企画などさまざまな催しが行われ、ロンドン市民に長年親しまれてきた。

火災の原因は現時点では不明だが、電気設備の不具合や暖房器具の故障などが取り沙汰されている。関係当局は現場を封鎖し、残された鉄骨部分の安全確認とともに原因調査を急ぐ方針だ。

炎上する建物を見つめていたある男性は、「ここは我々の誇りだった。ロンドンが心の一部を失ったように感じる」と肩を落とした。夜通し立ち尽くす市民も多く、現場周辺には深い沈痛な空気が漂っている。

英国文化の象徴でもあった水晶宮の喪失は、国内外に大きな衝撃を与えており、再建の可能性を含め今後の議論が注目される。

— RekisyNews 国際面 【1936年】

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