【東京 8月14日】
本日、大蔵省特許局は国内初の専売特許証を交付し、発明保護制度が正式に始動した。特許第1号は東京在住の堀田瑞松氏による「錆止塗料の製法」に与えられ、併せて数件の発明に特許が付与された。
特許制度は今年4月に公布された専売特許条例に基づくもので、発明者の権利を一定期間保護し、模倣や無断使用を禁じる仕組みである。これにより、国内の技術開発や産業振興が促されることが期待されている。交付式は霞が関の特許局庁舎で行われ、担当官が証書を読み上げ、発明者に手渡した。
第1号となった堀田氏の発明は、鉄製品の腐食を防ぐための塗料に関するもので、造船・橋梁・機械部品など広範な分野での利用が見込まれる。堀田氏は「長年の研究がこうして認められたことは、何よりの励み」と語り、今後も改良を重ねる意欲を示した。
制度発足に先立ち、政府は欧米諸国の特許法制を調査し、日本の実情に合わせた形に整備してきた。特許局長は「発明者の努力が正当に報われる環境を整えることが、国力の基礎を強くする」と述べ、広く国民に制度の利用を呼びかけた。
市井の商工業者からは「新しい技術が守られれば、安心して開発投資ができる」と歓迎の声が上がる一方、「地方の小規模職人には手続きや費用が負担」との懸念も聞かれる。
今回の交付は、我が国が近代的な知的財産制度への第一歩を踏み出した象徴的な出来事であり、今後の発明界の活況が注目される。
— RekisyNews 経済面 【1885年】