【シアトル 11月24日】
本日午後、アメリカ北西部で発生した旅客機ハイジャック事件において、犯人が要求した現金20万ドルとパラシュートを受け取った後、飛行中の機内から姿を消すという前代未聞の脱出劇が展開された。FBIは犯人の行方を追って大規模な捜索を開始しているが、現時点で行方は不明であり、事件は全米に衝撃を与えている。
事件が起きたのは、ポートランド発シアトル行きのノースウエスト・オリエント航空305便(ボーイング727型機)。午後3時頃、離陸直後に乗客の一人が客室乗務員に「爆弾を持っている」と告げ、操縦室へ伝達を要求。機はそのままシアトル・タコマ国際空港へ進路を取った。
犯人は「ダン・クーパー」と名乗る中年の白人男性で、黒いスーツにネクタイ、サングラスを着用し冷静な様子だったという。要求内容は20万ドルの現金、パラシュート4つ、燃料の補給であり、当局と航空会社は乗客の安全を最優先としてこれに応じた。
午後5時過ぎ、シアトル空港に到着後、乗客36名と一部の乗員を解放。犯人はパイロットらを人質に再び離陸させ、南方へと向かわせた。そして、午後8時頃、ワシントン州とネバダ州の境界付近を飛行中に、後部のタラップを開けてパラシュートで飛び降りたとみられる。
警察およびFBIは上空から地上まで広範囲にわたる捜索を開始したが、犯人は痕跡を一切残さず姿を消しており、捜査は難航。関係者によると、「クーパー」という名は偽名であり、実在の身元は特定されていない。
航空史上類を見ない犯行に、各方面から警備体制や危機管理の見直しを求める声が高まっている。事件は今後、航空犯罪への対応を大きく変える契機となる可能性がある。
— RekisyNews 国際面 【1971年】
