音楽が“銅貨”で流れる驚き──サンフランシスコの酒場に“自動演奏装置”が登場

【サンフランシスコ 11月23日】

本日、カリフォルニア州サンフランシスコの商業地区にあるパレ・ロワイヤル・サルーンにて、客がコインを投入することで音楽が流れる新型機械が初めて設置され、来場者の注目を集めているこの装置は「ニッケル・イン・ザ・スロット・フォノグラフ」と呼ばれ、実質的に“世界初のジュークボックス”と見なされる画期的な発明である

装置の本体は、エジソン式円筒型フォノグラフに独自の機構を組み合わせたもので、客が5セント硬貨を入れると、チューブを通じて音楽が聴こえる仕組み。会場には4つのリスニング・ステーションが用意されており、酒を片手に管を耳に当て、機械から流れる音に耳を傾ける客の姿が見られた

開発を手がけたのはルイ・グラス氏とパシフィック・フォノグラフ社で、「人々が気軽に音楽を楽しめる装置をつくりたかった」と語る。演奏される曲目は流行のマーチやオペラのアリアなどで、機械仕掛けとは思えない音の再現性に、客たちは一様に驚きの声を上げていた

この“自動音楽装置”は、現在のところ1回5セントで1曲。サルーンでは「手回しオルガンとはまるで別物」「これが未来の娯楽か」と評判を呼んでおり、今後、他の酒場や劇場にも広がる可能性が高いと見られている。

貨幣と音楽が結びついた夜──人々の娯楽のかたちが、いま静かに変わり始めている。

— RekisyNews 文化面 【1889年】

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