国産液体水素ロケット「H-1」初打ち上げ成功 大型衛星輸送に新時代

 【種子島 8月13日】

我が国初の液体水素燃料ロケット「H-1」1号機が本日午後、鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げられ、予定通り軌道投入に成功した。液体水素と液体酸素を推進剤とする高性能エンジンを採用したロケットの成功は国内初であり、大型人工衛星輸送能力の飛躍的向上を意味する。

午後3時、カウントダウンの後に白煙とともに上昇したH-1は、南東方向へ針路を取り、第1段切り離し、第2段点火を経て計画軌道へ到達。今回のミッションでは静止衛星打ち上げ用の試験ペイロードを搭載し、機体性能や誘導精度を検証した。宇宙開発事業団(NASDA)は「全シーケンスが計画通り完了し、今後の定常運用への道が開けた」と発表した。

H-1は全長約40メートル、打ち上げ時重量約140トン。第1段は米デルタロケットの設計を基に国産化し、第2段には三菱重工業製の液体水素エンジンLE-5を搭載している。LE-5は高い推進効率と長時間燃焼能力を備え、静止衛星を直接投入可能な性能を持つ。

会場で打ち上げを見守った関係者や地元住民からは大きな歓声が上がった。見学に訪れた高校生は「真っ白な機体が空に消えていくのを見て鳥肌が立った」と興奮気味に話した。技術者の一人は「液体水素の運用は困難だが、その先に宇宙輸送の新しい地平がある」と語った。

今回の成功により、日本は液体水素ロケットを実用段階に導入した数少ない国の仲間入りを果たした。宇宙開発事業団は今後、H-1による実運用を経て、全段国産化の新型機H-2への移行を計画している。

— RekisyNews 科学面 【1986年】

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