江川卓投手、読売ジャイアンツと電撃契約 揺れ続けたドラフト問題に決着

【東京 11月21日】

プロ野球界を揺るがしてきた江川卓投手の去就問題が、本日ついに大きな転機を迎えた。読売ジャイアンツは午後、江川投手との入団契約を正式に発表。昨日20日を「空白の一日」として扱い、他球団による指名権が効力を失ったと解釈する前代未聞の手法で、特例的な契約に踏み切った。

江川投手は作新学院・法政大学で活躍し、「怪物」と呼ばれた逸材。複数球団が獲得を狙っていたが、本人は巨人入りを熱望していたとされる。ところが、ドラフト制度の下では巨人以外の球団が交渉権を得る可能性が高く、江川投手の進路は長らく不透明な状態が続いていた。

事態が急展開したのは昨夜から今朝にかけてである。巨人側は、ドラフト指名が行われなかった20日を制度上の「空白」と位置づけ、この期間中に選手が自由契約の扱いになる可能性を主張。これを根拠に、本日午前の交渉を経て江川投手との契約が成立した。球団代表は会見で「江川君の希望と球団の方針が一致した」と述べ、一連のプロセスに問題はないとの姿勢を強調した。

一方で、他球団や野球関係者からは強い反発の声が上がっている。特に、制度の隙を突く形での契約に対して「ドラフトの根幹を揺るがす」「公正さを欠く」との批判が相次ぎ、プロ野球機構も事態の収拾に追われている。ファンの間でも賛否は分かれ、都内では報道を見守る人々が議論を交わす姿が見られた。

江川投手は会見で「プロとして最善の道を選んだ。投手として責任を果たしたい」と静かに語った。高校時代から球界の注目を集めてきた右腕は、ようやく望んだ舞台に立つこととなったが、その門出は前例なき混乱の渦中で迎えることになった。

— RekisyNews スポーツ面 【1978年】

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