【パリ 11月21日】
本日午後、パリ西部ラ・ミュエット地区で、製紙業者として知られるモンゴルフィエ兄弟が開発した熱気球が人類史上初めて有人飛行に成功した。搭乗したのは国王ルイ16世の命を受けた貴族 ジャン=フランソワ・ピラートル・ド・ロジエ と フランソワ・ローラン・ダルランド侯 の2名で、飛行は約25分間にわたり、市民らは空を舞う巨大な布製気球を見上げながら歓声を上げた。
気球は青地に金模様をあしらった豪奢な外観で、高さ約20メートルの布袋に熱せられた空気を満たして離陸。午後1時過ぎ、地上を離れ上昇すると、風に流されるようにパリ市街上空を優雅に移動した。到達高度は約900メートルとも伝えられ、着地点はブローニュの森近く。2名はいずれも無事で、現場には大きな喝采が巻き起こった。
この飛行は、6月の無人気球実験に続く同兄弟の挑戦の集大成であり、王立科学アカデミーの立会いのもとで行われた。従来、人間が空を飛ぶことは不可能と考えられていたが、今回の成功により「大気の海を航行する」という概念が現実のものとなった。
現地の観測者の一人は、「我々は歴史の瞬間を見た。いずれは遠くの国々へも空から旅できるだろう」と語り、空への夢が大きく広がっている。フランスは新たな科学的偉業を世界に示した形で、欧州諸国はこの革新がもたらす将来の可能性に注目している。
— RekisyNews 科学面 【1783年】
