ベートーヴェン、渾身の新作オペラ初演も客席は冷淡──『フィデリオ』不発の船出

【ウィーン 11月20日】

作曲家ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(35)が手がけた新作オペラ『フィデリオ』が本日、ウィーン郊外のアン・デア・ウィーン劇場で初演された。ベートーヴェン自身が指揮台に立つ気迫の公演となったが、観客の反応は期待に反し冷ややかで、多くが途中で席を立つなど、船出は厳しいものとなった。

本作は、囚われの夫を救おうと男装して牢獄に潜り込む妻レオノーレの勇気を描いた全2幕の歌劇。英雄的な理想と道徳的な高潔さを主題としており、フランス革命以後の自由と正義の気風を色濃く反映している。しかし、劇場関係者によれば、物語は荘重で音楽は精緻ながらも重厚過ぎ、一般客には「難解に過ぎた」との声があがったという。

演奏面では、ベートーヴェン特有の緊張感あるテンポや複雑な合奏が響き、歌手・管弦楽団ともに高い集中力を見せたが、指揮台の作曲家は終始厳しい表情。オーケストラ内には「リハーサルの時間が足りず、細部が整わなかった」との声もあり、準備不足が響いたかたちだ。

また、初演日が皇帝侍従らの催事と重なったため来客が少なく、劇場側は集客面でも苦戦。公開初日にもかかわらず空席が目立ち、「観客運」の悪さも今回の評価に影を落とした。

ベートーヴェンは公演後、「作品そのものは必ず評価されるはずだ」と語り、改訂の意志を示した。多くの音楽家は、本作が今後手直しを重ね、より完成度を高めて再び世に問われるだろうと見ている。

— RekisyNews 文化面 【1805年】

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