横綱栃ノ海、土俵に別れ──右膝悪化で現役生活に幕

【東京 11月19日】

大相撲の第49代横綱として活躍してきた栃ノ海(本名・花田満、春日野部屋)が本日、右膝の慢性的な故障を理由に引退届を日本相撲協会へ提出した。精悍な差し身と鋭い寄りで知られた実力横綱が土俵を去るとの知らせに、両国国技館周辺は朝から重い空気に包まれている。

栃ノ海は青森県出身で、昭和29年春場所に初土俵。軽量ながら鋭さと対応力で頭角を現し、昭和40年秋場所後に横綱へ昇進した。だが昇進後は持病の右膝を悪化させ、満足な稽古が積めない日々が続いていた。特に今年に入ってからは休場が増え、関係者の間では「限界ではないか」との声がささやかれていた。

本日午前、報道陣の前に姿を見せた栃ノ海は「力士として最後まで全うしたかったが、膝がもう言うことをきかない」と静かに語った。師匠の春日野親方も「本人が一番つらかったはず。よくここまでやった」とねぎらいの言葉を述べた。

突然の引退発表で、館内外では惜しむ声が相次いでいる。観客の一人は「体は小さくても横綱らしい気迫があった」と話し、若い力士からは「稽古で教わった言葉を忘れない」と感謝の声が聞かれた。

協会は今後について、年寄名跡取得を含めた栃ノ海の身分を検討するとしている。土俵での勇姿は消えるが、その相撲観と技術は若い世代に受け継がれていくことになりそうだ。

— RekisyNews スポーツ面 【1966年】

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