【江戸城 8月13日】
江戸幕府の老中に就任した松平定信は本日、城中にて幕府諸役人を前に訓戒を行い、かつての享保年間の政治を手本に政務を正すよう求めた。定信は「倹約・勤倹を旨とし、風紀と規律を正さねば国は治まらぬ」と述べ、各奉行所・代官所に至るまで綱紀粛正を徹底する方針を示した。
訓戒は、近年の財政逼迫や米価高騰、町人文化の華美化など、幕政の緩みに対する危機感を背景としている。定信は八代将軍徳川吉宗の施策を引き合いに出し、倹約令や農村復興策を再び徹底する必要を強調。併せて役人には清廉を求め、私利を図る行為や不正な金銭授受を厳禁すると断じた。
席上では、町奉行に対し贅沢な催事や遊興の取り締まりを強化するよう指示。また勘定奉行には出費の精査と無駄の削減、農政担当には飢饉対策として備蓄米の増強を命じた。さらに寺社奉行には、社寺の新築や修繕において過度な装飾を控えるよう通達したという。
定信は「為政の要は正風を興すにあり」と語り、役人一人ひとりが模範となるべきと説いた。訓戒後、出席した与力の一人は「己が襟を正さねばと感じた」と話し、町方の同心は「これからは無駄遣いを見逃さぬ」と気を引き締めた様子だった。
幕府内では、この訓戒が一過性に終わるか、それとも本格的な施策の序章となるかに注目が集まっている。定信は近日中にも具体的な倹約令や農政方針を布告するとみられ、城下では早くもその内容を巡って憶測が飛び交っている。
— RekisyNews 政治面 【1787年】