【横浜 11月16日】
横浜市元町で本日、洋菓子店「不二家」が開業した。創業したのは、海外経験をもつ菓子職人の藤井林右衛門(ふじい りんえもん)氏。日本人による洋菓子専門店はまだ少なく、外国人居留地を擁する横浜の地に新たな甘味文化の拠点が誕生した形だ。
店内では、スポンジケーキやバターケーキ、焼き菓子などが並び、開店早々から近隣の主婦や外国人客が訪れた。林右衛門氏は長年、神戸や横浜の洋菓子店で修行を積み、海外の製法を学んだ経験を活かし、「日本人にも親しめる味」を目指した商品づくりに力を入れている。
開店にあたって、卵やバターをふんだんに使う洋菓子の製造は原価も高く、国内ではまだ珍しい挑戦といえる。だが、港町横浜は外国文化への関心が高く、輸入洋菓子を求める客も多い。店は元町通りに面しており、観光客や外国人居留者の往来も多いことから、将来性を期待する声が上がっている。
林右衛門氏は「菓子づくりは人を喜ばせる仕事。日本の子どもたちにも本場の味を届けたい」と語った。文明開化の息吹が残る元町で、洋菓子文化が根づく新たな一歩となりそうだ。
— RekisyNews 文化・社会面 【1910年】
