幸徳秋水ら、社会主義の新拠点「平民社」を設立 『平民新聞』創刊

【東京 11月15日】

社会主義思想の普及を掲げる新団体「平民社」が設立され、本日、その機関紙となる『平民新聞』の創刊号が発行された。中心となったのは、先ごろ新聞『萬朝報』を退社した幸徳秋水堺利彦の両氏で、既存の政党政治や資本主義的社会構造に批判的な立場を明確にしている。

創刊号では「弱き者の声を伝える新聞」として、労働者・農民・婦人など社会的弱者の立場からの論評を掲げた。巻頭には「平民のための平民による新聞を」との宣言文が掲載され、日露開戦の気配が高まる中での反戦・平和主義を強調。国家主義の高まりに警鐘を鳴らしている。

編集・印刷ともに資金は乏しく、仲間内での寄付と手作業による発行だが、誌面は硬派な論説と社会批評に満ち、知識人層を中心に注目を集めている。販売価格は一部一銭。東京市内の書店や街頭でも取り扱いが始まり、短期間で広範な読者を獲得する勢いだ。

平民社は今後、講演会や出版活動を通じて社会主義思想の啓発を進める方針。幸徳氏は「権力や資本に従うことなく、真の民の声を世に問う」と語った。新しい言論の灯が、近代日本の社会思想に一石を投じようとしている。

— RekisyNews 社会・思想面 【1903年】

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