バイロイトで新音楽殿堂開幕 楽劇『ニーベルングの指環』一挙上演

 【バイロイト 8月13日】

バイエルン王国の小都市バイロイトで本日、新設の祝祭劇場がこけら落としを迎え、リヒャルト・ワーグナー作曲の四部作楽劇『ニーベルングの指環』が初日の幕を開けた。楽聖ワーグナーが自ら設計に関与した劇場は、舞台機構と音響設計に革新を盛り込み、世界中の音楽家や愛好家の注目を集めている。

開幕公演は『ラインの黄金』。午後4時、客席の灯が落ちると、深い緞帳の奥から静かに前奏が流れ、観客は息を呑んで水底の情景へ引き込まれた。舞台は奥行きを活かした遠近法と最新の照明で構築され、観客席はオーケストラ・ピットを完全に覆い隠す独自構造により、音が舞台から自然に湧き上がるように響く。

初日にはヨーロッパ各国から王侯貴族、作曲家や批評家が多数来場。バイエルン国王ルートヴィヒ二世の姿も見られ、終演後には楽屋でワーグナーと固く握手を交わしたという。観客の一人は「音楽と舞台が一体となった壮大な物語世界だ」と感嘆の声を上げた。

ワーグナーはかねてから、自作を理想的環境で上演する専用劇場を構想しており、バイロイトでの建設は長年の夢の実現である。今月末までに四部作全編が通し上演される予定で、滞在する客も多く、町の宿泊施設は満室状態だ。

音楽界では、この祝祭劇場の開幕が舞台芸術の在り方に新しい指針を示すと見られており、ワーグナー自身も「ここから未来の劇場文化が始まる」と語っている。

— RekisyNews 文化部 【1876年】

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