【東京 11月14日】
日本初の民間雑誌として知られる『明六雑誌』が、本日正式に停刊となった。創刊以来わずか3年、通巻43号でその歴史に幕を下ろした。
『明六雑誌』は、明治初期の啓蒙思想の担い手たちによって結成された「明六社」が発行する言論誌であり、明治6年(1873年)に創刊。福沢諭吉や西周、加藤弘之、中村正直ら当時の知識人が筆を執り、西洋の哲学・自然科学・政治思想を紹介しつつ、近代日本に必要な国民教育や自由思想の涵養を目指してきた。
雑誌の内容はしばしば宗教や政治制度、道徳観にまで踏み込み、保守派の反発を招くことも少なくなかった。特に儒教批判やキリスト教擁護といった内容は、当時の読者層から賛否が分かれた。また、文明開化の流れと相まって急速に思想が多様化する中、編集方針の一貫性や読者層の絞り込みが難しくなっていた。
発行元である明六社は、「時代の移ろいと読者の関心の変化に伴い、啓蒙の手段も再考すべき時期が来た」として、雑誌の停止を決断したという。
『明六雑誌』は、短い期間ながらも近代日本の思想界に深い足跡を残した存在である。その功績は、今後の出版や教育、言論の自由の礎として語り継がれることになるだろう。
— RekisyNews 文化面 【1875年】
