【大坂天満 11月13日】
本日未明、大坂天満屋敷町近くの天満橋付近で、紙屋治兵衛(かみやじへえ)と曾根崎新地の遊女・紀伊国屋小春(きのくにやこはる)が心中を遂げた。両名の遺体は橋のたもとで発見され、町中に大きな衝撃が走っている。
治兵衛は平野町で商いを営む手代で、妻子ある身でありながら、かねてより小春と深い仲にあったとされる。消息筋によれば、近ごろ小春が身請けの話を断り、出家を望むそぶりを見せていたことから、二人の仲に何らかの障害があったことが推察される。
周囲には、「死しても添い遂げたい」と語っていたという噂もあり、心中の動機は恋愛による情死と見られている。治兵衛には幼い子もおり、町民の間では「親不孝である」との声が上がる一方、「純粋な恋の成就が叶わなかった哀れな結末」と同情の念を寄せる者も多い。
この事件を受け、幕府や町奉行所では風紀の乱れを危惧し、心中事件の再発防止に向けた規制強化を検討しているとの話もある。
なお、この心中事件は、後日、近松門左衛門により人形浄瑠璃『心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)』として脚色される予定で、芸能界にも波紋を広げつつある。
— RekisyNews 社会面 【1720年】
