日本、南極への第一歩──観測船「宗谷」、晴海ふ頭を出航

【東京 11月8日】

本日午前、日本初の南極観測隊「南極地域観測予備隊」を乗せた観測船「宗谷」が、東京・晴海ふ頭から南極へ向けて出航した。これは昭和31年度より本格化する国際地球観測年(IGY)への参加に先立つ準備航海であり、日本の南極観測事業の歴史的第一歩となる。

「宗谷」には隊員53名と船員、報道関係者などが乗り込み、目的地である南極・昭和基地予定地の建設と気象・地磁気・生物などの予備観測を担う。厳寒地での活動に備え、特別な耐氷装備と物資が積まれた同船は、かつての海軍特務艦を改装したものであり、戦後の平和利用として新たな使命を帯びて再出発した形だ。

出航式には文部省、海上保安庁、学術関係者らが出席し、隊員たちの安全と任務達成を祈願。会場には多くの市民も詰めかけ、盛大な見送りが行われた。

この観測事業は、地球規模の科学的知見の共有と平和利用を目的とする国際共同研究の一環であり、日本の科学技術と外交においても重要な意味を持つ。「宗谷」は、赤道を越え、南氷洋の過酷な航海を経て、来年1月頃の南極接岸を目指す予定だ。

— RekisyNews 科学面 【1956年】

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