【ミュンヘン 11月8日】
本日午後9時20分ごろ、ナチス党の記念演説が行われていたビュルガーブロイケラー(市民ビール醸造所)で爆弾が爆発し、8名が死亡、60名以上が負傷する惨事が発生した。だが演説の主役であるアドルフ・ヒトラー総統は、予定を早めて演説を終え、直前に退場していたため無事だった。
この事件は、ドイツ共産主義者でもなく、国外の工作員でもない一人の職人による単独犯行だったことが判明している。逮捕されたのはゲオルク・エルザー(36歳)。シュヴァーベン地方出身の木工職人で、事件当時はスイスとの国境付近で警察に身柄を拘束され、不審物を所持していたことから追及を受け、自供に至ったという。
エルザーは数週間にわたり、閉館後の醸造所に密かに侵入して演壇裏の柱に時限爆弾を設置していた。標的はもちろん、毎年この日に党の古参闘士らとともに演説を行うヒトラー総統だった。
だが、当日は天候の悪化により列車の運行に支障が出る恐れがあったため、総統は例年よりも30分早く演説を切り上げて出発。その13分後に爆弾が炸裂した。わずかな時間差が総統の命を救ったかたちとなった。
国家保安本部(RSHA)はすでに詳細な捜査を開始。ゲシュタポ関係者によれば、「卑劣な単独犯による国家転覆の試み」として厳重に追及する方針という。
ドイツ国内では本事件に大きな衝撃が走っており、ヒトラー総統を守った「神の加護」との声も上がっている。
— RekisyNews 国際面 【1939年】
