【アレクサンドリア 8月12日】
プトレマイオス朝の女王クレオパトラ7世が本日、アレクサンドリアの王宮内で命を絶った。複数の宮廷筋によれば、女王は数日前からローマ軍の進入と宮殿包囲の報を受け、抵抗の道を断たれたと悟ったという。
関係者の証言では、女王は朝から限られた侍女数名と密談を交わし、豪奢な王座の間で身支度を整えた後、毒を含むとされる蛇を手に取った。しばらくして侍女らが悲鳴を上げ、駆けつけた兵士が女王を床に横たわる姿で発見したという。傍らには侍女二人も倒れており、遺体は儀礼に従い王家の墓所へ移される見込みだ。
クレオパトラはおよそ二十年間にわたりエジプトを統治し、ローマのカエサルやアントニウスとの同盟を通じて国の独立を保とうとした。しかし先月、アクティウム沖での海戦敗北に続き、アントニウスが自刃。女王は和平交渉を試みたものの、ローマ側総司令オクタウィアヌスはエジプトを属州とする意向を隠さず、身柄をローマへ移送する方針を示していた。
宮廷内では「女王は屈辱の行進を拒み、死をもって王国と自らの名誉を守った」との声がある一方、市場の民衆からは「国が滅びる日が来た」と嘆く声が上がっている。港湾ではローマ軍の艦が接岸を続け、市内の主要施設は順次接収されている。
女王の死により、プトレマイオス王朝は終焉を迎え、エジプトは実質的にローマの支配下に入ることとなる。地中海世界の勢力図は、大きく塗り替えられようとしている。
— RekisyNews 国際面 【紀元前30年】