堀江謙一氏、太平洋単独無寄港横断に成功 日本人として初

 【サンフランシスコ 8月12日】

大阪の青年航海者・堀江謙一氏(21)が本日、全長わずか5.8メートルのヨット「マーメイド号」で太平洋の単独無寄港横断に成功し、米カリフォルニア州サンフランシスコ港に到着した。日本人として初めての快挙であり、世界でも稀な長距離航海記録となる。

堀江氏は今年5月12日に西宮港を出航。食料や水を船体に積み込み、無線連絡や補給を受けずに航行を続けた。全行程は約8300キロに及び、荒天や高波に幾度も見舞われながらも、簡素な帆装と独力の操舵で太平洋を横断した。途中、北太平洋の高気圧帯で無風の日が続き、1日数海里しか進めない停滞も経験したという。

サンフランシスコ到着の知らせは現地でも大きな話題となり、岸壁には多くの市民や在留邦人が集まった。堀江氏は「一人の力ではなく、皆の応援と自然への敬意がこの航海を支えた」と笑顔で語った。痩せた顔には長旅の疲労がにじむが、日焼けした肌と引き締まった表情が達成感を物語っていた。

今回の航海は、世界的にも注目される小型ヨットの長距離記録であり、今後の日本人セーラーや冒険家に大きな刺激を与えるとみられる。海事関係者は「小型艇での外洋航海技術の高さを示した」と評価し、ヨット愛好家からは祝電が相次いだ。

堀江氏は数日間の休養後、ヨットを整備して帰国の途に就く予定。若き航海者の挑戦は、日本の海洋史に新たな1ページを刻んだ。

— RekisyNews 社会面 【1962年】

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