【ニューヨーク 8月12日】
縫製業に革新をもたらすと期待される新式ミシンの特許が、本日、発明家アイザック・メリット・シンガー氏に付与された。従来の縫製機械に改良を加え、家庭用から工場生産まで幅広く活用できる構造を備えるのが特徴で、縫製産業の生産性向上が見込まれる。
新特許の要点は、垂直に動く針機構と布送り装置の組み合わせ、さらに踏み板による駆動方式である。これにより、縫い目の均一性と作業速度が向上し、長時間の連続運転にも耐える設計となった。特に布送り機構は一針ごとに確実に布を進めるため、手縫いでは数時間を要する作業が短時間で仕上がる。
シンガー氏は既にニューヨーク市内で試作品を披露し、仕立屋や工場主らが操作性を確認した。ある仕立屋は「針と布の動きが安定しており、子供でも扱えそうだ」と述べ、女性労働者からも「縫う速さに驚いた」との声が上がった。これまでの大型で高価な機械に比べ、小型化と低価格化を視野に入れたことも注目されている。
背景には、都市部を中心に既製服の需要が急増し、縫製の効率化が課題となっている現状がある。新特許の取得により、シンガー氏は製造と販売を一体化した事業展開を計画しており、量産体制が整えば各地の工房や家庭にも普及する可能性が高い。
市内の商人は「縫製の手間を減らせば、婦人服や軍服の供給速度が格段に上がる」と分析。新型ミシンは、縫製産業のみならず生活様式そのものを変える契機となりそうだ。
— RekisyNews 経済面 【1855年】