大坂豊竹座、新作浄瑠璃『絵本太功記』初演 戦国の世を描く義太夫節

 【大坂 8月12日】

大坂・道頓堀の豊竹座で本日、義太夫節による新作人形浄瑠璃『絵本太功記』が初めて上演された。全十三段の構成で、天下統一を目前にした武将の栄華と悲劇を描き、初日から多くの観客で賑わった。

作品は並木千柳ほか数名の合作とされ、物語は安土桃山の戦乱を背景に、武将光秀の謀反とその家族の運命を軸に展開する。時代の名場面を巧みに織り込みつつ、主君と家臣、父と子の情愛を描いた筋立ては、開幕前から芝居通の間で評判を呼んでいた。

初段は京の都を舞台に、壮麗な城と戦支度の緊張感を描く場面から始まる。中盤の山崎合戦の場面では、大太鼓や笛の響きが戦場の熱気を伝え、人形遣いの息の合った動きに観客がどよめいた。特に十段目「尼ヶ崎閑居の段」での母子の別れは涙を誘い、三味線と語りが一体となった哀切の調べが座内を包んだ。

豊竹座の舞台は今春から改修され、背景画や大道具の転換が滑らかになったことで、合戦や城下町の情景が一層映える仕上がりとなった。観客の一人は「人形の目や指先まで生きているようだ」と感嘆し、商家の若主人は「世の移り変わりと人の情けを感じさせる」と語った。

興行は今月末まで続く予定で、座元は「芝居見物の合間に土産物や川魚料理も楽しんでほしい」と呼びかけている。新作の評判は既に他座にも広まり、近く京や江戸でも上演される可能性がある。

— RekisyNews 文化部 【1799年】

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次