黒岩涙香、『萬朝報』を創刊──庶民の言論を代弁する新興日刊紙

【東京 11月1日】

本日、ジャーナリストであり翻訳家としても知られる黒岩涙香(くろいわ・るいこう)氏が、新たな日刊新聞『萬朝報(よろずちょうほう)』を東京で創刊した。日々の庶民生活に密着した話題と、政府・社会に対する批判精神を特色とする本紙は、「万事を報ずる新聞」として、広範な読者層を狙って発行される。

『萬朝報』は、創刊号からして言論の自由と国民の覚醒を促すような論調が見られ、これまでの大新聞が取り上げなかった庶民の視点に重きを置く姿勢が印象的だ。また、涙香氏自身の署名コラムも掲載されており、鋭い筆致で時勢を切る論説に早くも注目が集まっている。

印刷部数は当初1万部とされており、東京市中の新聞販売店を通じて配布が開始された。平易な言葉づかいと機敏な編集方針は、特に中産階級以下の市民の支持を受けることが期待されている。

黒岩氏は、これまで欧米思想の紹介や翻訳文学などを通じて啓蒙活動を続けてきた人物であり、新たな報道機関の設立により、より直接的に社会への影響力を及ぼす意図が感じられる

「権力に迎合せず、民の声を代弁する新聞を」と語る涙香氏の挑戦が、明治の言論界にどのような波紋を広げるのか、今後の展開が注目される。

— RekisyNews メディア面 【1892年】

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