小さな勇者、シービスケットが王者を撃破──伝説の一騎討ち、全米を熱狂させる

【メリーランド州ピムリコ競馬場 11月1日】

全米の注目が集まる中、本日行われた史上空前のマッチレースにて、小柄なサラブレッド“シービスケット”が三冠馬“ウォーアドミラル”を破り、世紀の一戦を制した。

午前中から詰めかけた観衆の数は4万人以上。ラジオ中継を通じて全米4000万人が耳を傾けたこの一戦は、まさにアメリカの希望と誇りを象徴するドラマとなった。これまで「労働者階級のヒーロー」と呼ばれてきたシービスケットは、王者ウォーアドミラルに対して先行逃げ切りの完勝。距離1マイルと3/16(約1911メートル)を1分56秒4で走破した。

騎乗したジョージ・ウルフ騎手の巧みなレース運びも勝因のひとつ。スタートから果敢に前に出ると、ウォーアドミラルの追い上げを冷静に封じ、ゴールでは1馬身以上の差をつけた。

この勝利により、シービスケットは単なる競走馬の枠を超え、大恐慌に苦しむ国民に勇気と希望を与える存在として、その名を永遠に刻んだ。観客のひとりは「こんなレースは二度と見られない」と語り、場内は大歓声に包まれた。

— RekisyNews スポーツ面 【1938年】

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