【神聖ローマ帝国・ヴィッテンベルク 10月31日】
本日、ザクセン選帝侯領ヴィッテンベルクの聖人の城教会において、アウグスチノ会修道士で神学博士のマルティン・ルター(33)が、教会の贖宥状販売に対する批判を公然と表明する文書「95ヶ条の論題」を掲示した。教会扉への貼り出しは、神学的討論を呼びかける正式な手続きとして行われたもので、宗教界に大きな波紋を呼んでいる。
この「95ヶ条」は、罪の赦しを金銭で得るという贖宥状の教義に根本的な疑問を呈する内容で、教皇の権限、信仰と悔悛の意義、教会の在り方など多岐にわたる。
特に、ルター神父は「魂の救いはただ信仰と神の恩寵によるものである」とし、現在行われている贖宥状の商業的販売は信徒を誤導するものだと断じている。
贖宥状とは、本来、悔悛の意思を表した者に対し罰の軽減が認められる教会の制度だが、近年はサン・ピエトロ大聖堂建設資金調達のために各地で活発な販売が行われ、特にドイツ各地ではテッツェル修道士らの強引な売り込みが問題視されていた。
ルター神父は現在、ヴィッテンベルク大学で聖書講義を行っており、教皇庁の権威には忠実でありながらも、聖書に立脚した神学的正義を貫く姿勢を崩していない。
教会内部からの異議申し立てが表面化した今回の事態は、神学界・信徒社会に大きな議論を巻き起こすことは必至であり、ドイツ諸侯や教会関係者の対応が注目されている。
— RekisyNews 宗教面 【1517年】

 
			 
			 
			 
			 
			 
			 
			