【ニューヨーク 10月27日】
本日午後、米国最大の都市ニューヨークにおいて、待望の地下鉄路線がついに開業した。 初の営業列車は午後7時頃、マンハッタン・シティホール駅を出発し、アッパー・マンハッタン方面へ向けて総延長約15キロ(9.1マイル)を走行。 地下鉄の正式な運行開始に、駅前には市民ら数千人が詰めかけた。
運行を担うのはIRT(Interborough Rapid Transit Company)で、今回開業した区間はシティホール駅からグランド・セントラル駅、タイムズスクエア駅を経由して、ブロンクス方面へと至る計28駅。全線が電気駆動の列車で構成され、蒸気機関を使用しない点で画期的である。
これまで混雑と騒音に悩まされてきたマンハッタンの地上交通に比べ、地下鉄は速く静かで、天候にも左右されない新たな交通手段として注目を集めている。 初乗り運賃は5セントと手頃で、1回の乗車で最大で18マイル(約29km)まで移動可能。
開業式典にはニューヨーク市長ジョージ・B・マクレラン氏も出席し、記念すべき最初の列車の運転士を自ら務めるという異例のセレモニーも行われた。市長は「これは都市の未来を拓く鉄路であり、市民の生活を根底から変えることになる」と高らかに宣言した。
今回の地下鉄開業は、ロンドン(1863年)、ブダペスト(1896年)、パリ(1900年)に続く世界的都市の潮流に乗ったものであり、米国における都市鉄道の新たな時代の幕開けを告げるものだ。
今後はクイーンズやブルックリン方面への延伸も視野に入っており、“眠らない都市”ニューヨークの骨格を形づくる存在となることが期待される。
— RekisyNews 社会面 【1904年】
