【ニューヨーク 10月22日】
本日、アメリカ・ニューヨーク州のアストリアにて、チェスター・F・カールソン氏(32歳)が、電気を用いた画期的な複写技術「ゼログラフィ(Xerography)」の実験に成功した。これにより、印刷物や文書をインクや感光紙を使わずに複写する新たな道が開かれることとなった。
カールソン氏は、特許事務所で働きながら夜間に物理学を学び続け、日々の煩雑な文書作業に疑問を抱いていたという。現在の複写技術では湿式複写や青焼きが主流であるが、それらは手間がかかり、鮮明さにも限界があった。
彼が発明したゼログラフィは、静電気を利用して画像を形成し、トナーで転写、熱で定着するという、まったく新しい仕組み。実験では、硫黄コーティングを施した亜鉛板に「10-22-38 ASTORIA」と手書きし、それを明確に紙へ複写することに成功した。
この技術は、将来的にビジネス、教育、行政など、大量の文書処理が必要な分野で革命をもたらす可能性が高い。現在はまだ試験段階であるが、研究が進めば、今後数年以内に実用化される見通しもあるという。
「私はただ、コピーがもっと簡単になればと思っただけです」と、カールソン氏は静かに語った。
— RekisyNews 科学技術面 【1938年】