【ベルリン 10月21日】
本日、ベルリンのコンサートホールにおいて、ウィーンの“ワルツ王”ヨハン・シュトラウス2世による新作『皇帝円舞曲(Kaiser-Walzer)』が華々しく初演された。この作品は、オーストリア=ハンガリー帝国とドイツ帝国との友好を象徴する皇帝同士の親善を記念して作曲されたものである。
荘厳なファンファーレに始まり、徐々に優雅な旋律が花開くこの円舞曲は、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世とオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の関係を賛美する“音の祝辞”ともいえる。
演奏会は満場の聴衆で埋め尽くされ、壮麗かつ堂々たる音楽が流れると、場内は静寂と興奮が交錯する特別な雰囲気に包まれた。楽章が進むにつれ、優美で軽やかなワルツの旋律が展開し、聴衆を夢心地へと誘った。
初演を終えたシュトラウス氏には惜しみない拍手と歓声が送られ、アンコールの声も飛び交った。演奏後、氏は「音楽を通じて皇帝陛下の友情を祝す機会を得たことを光栄に思います」と短く語った。
『皇帝円舞曲』は、今後ヨーロッパ中の宮廷や舞踏会で繰り返し演奏されることが予想され、国際親善の象徴としても長く記憶される楽曲となりそうだ。
— RekisyNews 文化面 【1889年】