森光子主演『放浪記』初日を迎える──芸術座に喝采、文壇の名作が舞台で蘇る

【東京・有楽町 10月20日】

本日、有楽町の芸術座にて、林芙美子の自伝的小説を原作とした舞台『放浪記』が初日を迎えた。主演は女優・森光子氏で、貧困と孤独の中でも懸命に生きる女性作家・林の青春を鮮やかに演じ上げた。

『放浪記』は、昭和初期を背景に、職を転々としながらも文学への情熱を捨てなかった林芙美子の苦闘の日々を綴った作品。舞台化にあたっては、原作の哀切とユーモアを巧みに織り交ぜながら、女性の強さと哀しみを描き出す構成となっており、初日の観客からは「涙が止まらなかった」「まるで林芙美子が舞台上に生きていた」との声が相次いだ。

主演の森光子氏は、林芙美子役に向けて長期間の稽古と役作りを重ねてきた。関係者によれば、演出家の意向でセリフだけでなく、所作や間の取り方まで徹底的に磨き上げたという。本日の公演では、森氏の熱演に加え、舞台美術や照明、音楽が一体となって作品世界を支え、開幕とともに舞台全体が時代の空気を帯びて動き出すような印象を与えた。

公演後のカーテンコールでは、満席の観客がスタンディングオベーションで応え、森氏は目に涙を浮かべながら何度も深く頭を下げた。

芸術座の広報担当者は「この作品が多くの方に愛され、長く上演され続けていくことを願っています」と語った。

— RekisyNews 文化面 【1961年】

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