【東京 10月20日】
戦没学生の手記を集めた記録集『きけ わだつみのこえ』が本日、正式に刊行された。編集を担当したのは、全国の大学関係者や有志による「日本戦歿学生手記編集委員会」で、第二次大戦中に戦場で命を落とした学生たちの遺稿が一冊にまとめられた形だ。
タイトルの「わだつみ」とは、古語で海神を意味し、太平洋戦争に散った学徒兵の象徴的存在として名付けられた。本書には、東大・京大をはじめとする全国の旧制高等学校や大学の学生が、出征直前や戦地から家族や友人へ宛てた日記・書簡・随筆などが収録されている。
それらの文章は、愛する者への惜別の情、青春の夢、国家や戦争に対する葛藤、死への覚悟などが、時に静かに、時に激しく綴られており、読み手の胸を強く打つ内容となっている。
編集委員の一人は、「戦争に散った学生たちは、単なる“兵士”ではなく、一人ひとりに人生があり、思想があった。彼らの声に耳を傾けることが、今を生きる我々の責務である」と語った。
刊行にあたっては、遺族からの協力も多数寄せられ、原稿提供や証言の提供などを通じて、記録集の完成に大きく寄与した。また、出版元の岩波書店によると、すでに教育関係者や学生の間で関心が高く、平和教育の教材としての活用も期待されている。
『きけ わだつみのこえ』は、戦争を生き抜いた者だけでなく、失われた声にも記憶を留めるための一冊であり、未来への問いかけでもある。
— RekisyNews 社会面 【1949年】