【東京 10月15日】
本日、若手歌手坂本九(さかもと・きゅう)による新曲『上を向いて歩こう』が、ビクターレコードよりシングル盤として正式に発売された。詞は放送作家としても活躍する永六輔、曲は気鋭の作曲家中村八大の手によるもので、「歩きながら泣かないように上を向く」という切ないながらも前向きな心情を描いた作品だ。
坂本九は、既に『悲しき六十才』などでアイドル的人気を得ていたが、今作ではより成熟した歌声と繊細な感情表現を披露。発売前からラジオやテレビでたびたび取り上げられており、「青春の応援歌」として若者世代から絶大な共感を呼んでいる。
レコード店各店では、朝から問い合わせが相次ぎ、一部では早くも品切れの店舗も出始めている。ビクターレコードは、「初回プレス分はすぐに追加生産に入る予定」とコメント。初動で数万枚の売上を見込んでいるとされ、今後のセールスにも期待が集まる。
また、今回の楽曲はリズム構成やメロディ進行にジャズやR&Bの要素が取り入れられており、「和製ポピュラー音楽」の新境地として、音楽関係者の間でも注目されている。
音楽評論家の間では「日本人の感性を生かしながら、世界に通じるポピュラー音楽が誕生した」との声もあり、今後海外展開を視野に入れた動きが出る可能性もある。
日本の若者たちの胸に灯る、静かで強い希望の歌声。その第一歩が、いま確かに刻まれた。
— RekisyNews 文化面 【1961年】