陸軍大尉ドレフュス、スパイ容疑で逮捕──参謀本部内部に衝撃走る

【パリ 10月15日】

本日、フランス陸軍参謀本部所属の砲兵大尉アルフレド・ドレフュス(34)が、国家機密漏洩の容疑により軍事警察に逮捕された。容疑は、ドイツ帝国駐フランス大使館付武官への軍事文書の漏洩であり、共和国の安全保障を揺るがす重大なスパイ事件に発展する可能性がある。

事情に詳しい軍関係者によれば、事件の発端は先月末、ドイツ大使館の廃棄文書から発見された“ボルデロー(手紙)”と呼ばれる匿名の文書であり、フランスの最新の砲兵配置や演習に関する情報が記載されていた。情報筋は、筆跡鑑定の結果を根拠に、ドレフュス大尉が文書の作成者であるとの見解を示している。

ドレフュス大尉はアルザス出身のユダヤ系軍人で、陸軍士官学校を優秀な成績で卒業後、急速に昇進を重ねてきた俊英であった。その逮捕は、軍内部はもとより、共和国全体に大きな衝撃と波紋を広げている

現在、軍事機密保護の観点から捜査は非公開とされており、本人の供述内容や証拠の詳細は明らかにされていない。ただし、一部では「筆跡鑑定の信憑性が不十分であり、拙速な結論ではないか」との声も上がっており、今後の取り調べと軍法会議の行方が注目される。

本件が事実であれば、軍の最高機密が長年にわたり外部に漏れていた可能性も否定できず、国家的失態といえるだろう。一方で、ユダヤ系士官に対する偏見の有無や、内部告発の背景を問う声もあり、事件は単なるスパイ摘発にとどまらぬ複雑な局面を迎えつつある。

共和国の中枢を揺るがすこの事件が、果たして真実の解明へと進むのか、あるいは新たな火種となるのか、国民は固唾をのんで成り行きを見守っている。

— RekisyNews 社会面 【1894年】

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