【ポーツマス沖 10月15日】
かつて欧州全土を震撼させた元フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトが本日、英海軍艦「ノース・アンバーランド号」によって南大西洋の孤島セントヘレナ島に送致された。これにより、ワーテルローの敗北から続いた元皇帝の身柄を巡る問題は、ついに「孤立による封印」という形で幕を下ろすこととなった。
セントヘレナ島は、アフリカ大陸西岸からおよそ2,000キロ以上離れた絶海の孤島で、住民は少数の英国人と混血の島民に限られ、周囲を切り立った断崖と荒波が取り囲む。英政府はこの地を「逃亡不可能な場所」と見做しており、ナポレオンの再台頭の芽を完全に摘む意図が明確である。
ナポレオンは、ワーテルローの戦い(6月18日)での敗北後、再び王政が復活したフランスを離れ、7月15日にロシュフォール港より自ら英艦へ投降した。だが、彼が望んだイギリス国内での庇護や亡命は認められず、「再び欧州を混乱に陥れる存在」として、この幽閉策が採られたとされる。
船上では形式上の待遇は守られているものの、英軍士官が常時監視し、日記や書簡なども検閲下に置かれている模様。ナポレオン側近の一部は同行を許されたが、島での生活には厳しい制限が設けられると見られている。
英議会内では、同情的な声もある一方で、「戦火に苦しんだ欧州各国の民意を思えば当然の措置」との意見が大勢を占める。なお、仏本国では依然としてナポレオン支持層が根強く存在しており、この幽閉によって情勢がどう動くか注視される。
一代の英雄が、ついに歴史の舞台から完全に退場した。孤島の地で、ナポレオンは何を思うのか。
— RekisyNews 国際面 【1815年】