ジム・ハインズ、ついに「10秒の壁」突破──男子100メートルで人類初の9秒台を記録

【メキシコシティ 10月14日】

第19回オリンピック・メキシコ大会にて行われた陸上男子100メートル決勝で、アメリカのジム・ハインズ(24)が驚異の9.9秒を叩き出し、人類史上初めて「10秒の壁」を突破する快挙を成し遂げた。これまで幾度となく挑まれてきた記録の壁が、ついに破られた瞬間である。

この日、標高2,300メートルのメキシコシティ・オリンピックスタジアムは、午後にかけて快晴に恵まれ、風速は許容範囲内の微風。会場は約8万人の観衆の歓声に包まれる中、決勝の号砲が鳴った。

スタート直後からハインズは他の選手を寄せつけない加速を見せ、中盤からの伸びも鋭く、フィニッシュラインを駆け抜けた瞬間、電光掲示板に「9.9」の数字が点灯。しばしの静寂の後、スタジアム全体が歓喜の渦に包まれた。

これまで男子100メートルでは、10秒00が世界記録とされ、紙一重の差で記録が更新されてきたが、今回の記録は電気計時による公式な計測で9秒台が確認された初の事例となる。

銀メダルは同じくアメリカのチャールズ・グリーン、銅メダルはジャマイカのレナード・ミットルが獲得。表彰台では三者とも笑顔で互いを讃え合い、ハインズは「これはすべてのスプリンターの夢だった。10秒の壁が破れたことで、新たな時代が始まる」と語った。

今回の記録には、高地による空気抵抗の低下が有利に働いたとの見方もあるが、それでも人類の身体能力と技術が限界を超えた瞬間であることに疑いの余地はない。

— RekisyNews スポーツ面 【1968年】

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