新開発の「鉄の肺」、小児患者の命救う──ボストンの病院で初の実用導入

【ボストン 10月12日】

本日、マサチューセッツ州ボストンにあるチャールズ・フランシス病院において、新たに開発された人工呼吸装置「鉄の肺(アイアン・ラング)」が初めて実際の治療に使用され、ポリオによる重度の呼吸麻痺に苦しむ少女の呼吸を回復させた。医学界では、人工的な呼吸補助機器が臨床で効果を示したのはこれが世界初とみられており、重篤な呼吸不全への対処法として大きな注目が集まっている。

この装置は、ハーバード大学のフィリップ・ドリンクル教授らの研究チームによって開発されたもので、金属製の円筒に患者の体をすっぽりと収め、内部の空気圧を一定のリズムで変化させることで、患者の胸郭を動かし、自発的に呼吸ができない者にも外部から人工的に呼吸を促すという仕組みとなっている。

今回の患者は8歳の少女で、先週末よりポリオによる急性の呼吸麻痺に陥り、通常の治療では手の施しようがなかったという。医師団は家族の同意を得たうえで、開発されたばかりの「鉄の肺」を試験的に使用。装置に入れられてからわずか数分で胸部の動きが戻り、呼吸が再開したとのことである。

装置の外観はまるで巨大な金属製のカプセルのようであり、一見すると威圧的ではあるが、構造は単純明快で、今後の量産と導入が期待されている。開発チームのドリンクル教授は「この技術は、多くの命を救うだろう。ポリオに限らず、様々な呼吸器疾患に応用が可能だ」とコメントした。

ポリオの流行が依然として続く中、本機器の登場は重症患者への新たな光明となる。医学界ではこの成功例を受け、他の医療機関でも導入が検討される見通しである。

— RekisyNews 科学面 【1928年】

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