【東京 10月12日】
本日、映画演劇大手の松竹株式会社は、東京に新たな舞台芸術団体「東京松竹楽劇部」の設立を正式に発表した。歌や踊りを中心に据えた“楽劇”を志向する本団体は、すでに関西方面で人気を博している宝塚少女歌劇団に対抗する形での創設と見られており、東京の大衆芸能界に新風を吹き込む存在として早くも注目を集めている。
拠点は浅草公園六区に新設された「帝都座」。初公演は来月中にも予定されており、すでに稽古が始まっているという。団員には舞踊や声楽の素養を持つ若い女性たちが集められ、洋装の華やかな舞台衣装とともに、歌唱・ダンス・芝居を組み合わせた一大レビュー形式の演目が用意されている模様だ。
松竹関係者は「映画に加えて、生身の演者が躍動する舞台の魅力は計り知れない。東京の観客にも新しい娯楽の形を提示したい」と意気込みを語った。また、団員の教育にあたっては、関西の舞台演出家や洋楽指導者の協力も得ており、技術面でも高い完成度が期待される。
東京松竹楽劇部は、近代化の波が押し寄せる昭和の都市文化を象徴する存在となる可能性も高く、松竹の舞台部門再編の一環として、今後の興行戦略において重要な役割を担うことが予想される。
観客に夢と非日常を提供する“楽劇”という新ジャンルが、銀幕とは異なる形でどこまで市民の心を捉えるか、今後の展開に注目が集まっている。
— RekisyNews 文化面 【1928年】