【東京 10月12日】
日本政界を揺るがせたロッキード事件のうち、丸紅ルートに関する刑事裁判で、東京地方裁判所は本日、被告の元内閣総理大臣・田中角栄氏(65)に対し、懲役4年および追徴金5億円の有罪判決を言い渡した。現職・元首相に対する実刑判決は戦後初の異例の事態であり、全国に衝撃が走っている。
判決を言い渡した浜末裁判長は、判決理由において「被告は国の最高指導者でありながら、自己の政治資金の蓄積を目的に企業から多額の金銭を受領した。国民の政治不信を招き、責任は極めて重い」と指摘し、被告の主張する無罪を全面的に退けた。
裁判の焦点は、アメリカの航空機メーカー・ロッキード社による旅客機導入を巡り、同社代理店である丸紅から5億円を超える賄賂を受け取ったとされる収賄容疑。判決では、田中被告が受領した金銭がその政治的影響力と引き換えであったと認定された。
田中氏側は、判決を受けた後も一貫して無罪を主張しており、弁護団は即日控訴の方針を表明。「政治的圧力による不当な裁きだ」と述べ、法廷内外で支援者らが抗議の声を上げる一幕もあった。
1976年に発覚したロッキード事件は、戦後最大の汚職事件とも呼ばれ、政財界に波紋を広げてきた。田中氏の起訴以降、政治活動は一時自粛されていたが、自民党内ではなお強い影響力を保ち続けており、今後の党内力学にも大きな影響を及ぼすものと見られている。
国民の間では、「一国の指導者が裁かれた意義は重い」「政界浄化の第一歩だ」など、厳しい声が上がっている一方で、田中氏の復権を望む根強い支持層の存在も改めて浮き彫りとなった。
— RekisyNews 社会面 【1983年】
アイキャッチ画像 首相官邸ホームページ, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=77216689による