【モスクワ 10月12日】
本日午前、ソビエト連邦は世界初の3人乗り宇宙船「ヴォスホート1号(Voskhod 1)」の打ち上げに成功したと発表した。これにより、宇宙開発競争において再び大きな一歩を記した形となる。
ヴォスホート1号は、モスクワ時間の午前7時30分(日本時間午後1時30分)頃、カザフ共和国のバイコヌール宇宙基地から発射され、無事地球軌道に投入された。搭乗しているのは、司令官ウラジーミル・コマロフ中佐、科学者コンスタンチン・フェオクトィストフ博士、軍医ボリス・エゴロフ医師の3名で、軍人・技術者・医師という異なる分野の専門家が同時に宇宙に赴くのも世界初の試みである。
これまでの宇宙船と異なり、ヴォスホート1号には宇宙服が搭載されておらず、限られた空間を有効活用して3名の同乗が可能となった。宇宙船内の居住空間は非常に狭く、乗員は固定椅子に並んで着座し、ほぼ身動きが取れない状態だとされる。
ソ連当局によれば、ヴォスホート1号のミッションは24時間を予定しており、地球を16周回する間に複数の医学・生理学的実験、そして船内での生活環境に関する観測が行われる見込み。帰還は13日午後になると見られている。
今回の成功は、1961年のガガーリン少佐による人類初の宇宙飛行に続く大きな成果であり、米国の「ジェミニ計画」に先んじて複数人搭乗を実現させた点で、国際的な注目を集めている。ソビエト各地では、宇宙飛行士たちの安全な帰還を願う声が高まっており、テレビやラジオでは打ち上げの速報が繰り返し報じられている。
宇宙開発を巡る米ソの競争は今後ますます激しさを増すとみられ、今回の打ち上げはその流れにおける歴史的な節目となった。
— RekisyNews 科学面 【1964年】