“幻の都市”に鍬が入る――シュリーマン氏、トロイア発掘を開始

【ヒサルルク(オスマン帝国)10月11日】

本日、ドイツ出身の考古学者ハインリヒ・シュリーマン氏が、ホメロスの叙事詩『イーリアス』に描かれた伝説の都市「トロイア」とされる地点で、本格的な発掘作業に着手した。

発掘地は、現在のオスマン帝国領ダーダネルス海峡南西岸のヒサルルクの丘。シュリーマン氏は、地元住民の伝承や地形、古典文献の記述をもとに、こここそが紀元前13世紀にギリシャ軍と激戦を繰り広げたトロイア戦争の舞台であると確信している。

本日朝、現地にて開かれた簡易な式ののち、現場責任者の号令で最初の鍬が地面に振るわれた。発掘はまず表層から始まり、段階的に地層を掘り下げていく計画だという。

シュリーマン氏は独学で古代ギリシャ語を習得し、事業家として得た資金をもとに考古学探査を続けてきた人物。以前はホメロスの記述が単なる神話に過ぎないとの見方が一般的であったが、同氏はその歴史的実在性を強く主張しており、今回の発掘はそれを裏付ける重大な試みとなる。

記者団の前でシュリーマン氏は、「この土の中に、かつて栄華を極めたトロイアの城壁や財宝が眠っていると信じている。私はそれを世界に証明してみせたい」と語り、強い決意をにじませた。

神話が史実へと姿を変える瞬間となるか――。歴史の扉が、今まさに開かれようとしている。

— RekisyNews 世界面 【1871年】

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